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2026.09.18

EUの牛肉生産動向:主要生産国とそのアジア市場での役割

EUの牛肉市場は大きな構造変化のさなかにあります。一方で、EUは世界の赤肉供給網において今なお重要な位置を占め、高品質牛肉の東アジア向け輸出ではヨーロッパの生産国が主要な供給者となっています。なかでも、フランス、ドイツ、ポーランド、アイルランドは長らく牛肉生産を牽引してきました。

Eurostatの公式統計によると、2024年のEUの牛肉生産量は660万トンでした。その4分の3強を6か国が占め、内訳はフランス20.0%、ドイツ16.9%、ポーランド11.1%、アイルランド10.5%、イタリア9.9%、スペイン9.4%です[2]。2025年は約640万~657万トンと推計され、前年より約1.0~1.3%減少したとみられます。フランスは約130万トン、EU全体の20.0%を占めて首位を維持し、ドイツが約110万トン、16.95%で続きました[2, 3]。3位と4位はスペイン(70万7,000トン、10.8%)とイタリア(67万6,000トン、10.3%)です。ポーランドは約64万トン、10.1%で、堅調な国外需要と輸出採算に支えられています。アイルランドはこれら主要国に比べると生産量は低く、その牛肉生産は縮小局面に入りました。2025年の推計では、屠畜頭数が5%以上減少したされてれます[1, 6]。

EU主要生産国それぞれが輸出する牛肉の特徴

ヨーロッパの農業は国ごとに特色があり、牛肉の商品構成や輸出品目にもその違いが表れます。フランスはシャロレー種、リムーザン種、ブロンド・ダキテーヌ種など代表的な肉用種の牛肉を得意とし、食味に優れた生鮮・冷蔵部分肉を中心に供給しています[3, 7]。アジア向けには、ヒレをはじめとする選別された高級部位や、外食・業務向けの商品が輸出されています。ドイツでは、ホルスタイン系などの乳用種やシンメンタール種などの乳肉兼用種が広く飼育されており、牛肉生産では、これらの品種の雄牛を含む肥育雄牛が大きな割合を占めます。輸出品目には、加工原料用の部分肉、四分体、挽肉、加工牛肉などがあります[8]。アイルランドでは、アンガス種やヘレフォード種を使った放牧肥育が生産のほぼ全体を占め、ステーキ用・煮込み用の冷蔵部分肉や冷凍牛肉が主な輸出品目です[6]。ポーランドでは国内生産の80%以上が輸出に向けられており、EUでも特に輸出志向の強い生産国です[4, 5]。中心となるのは、若齢牛(肥育雄牛および未経産雌牛)の骨なし部分肉、前四分体・後四分体の骨なし部分肉、宗教上・文化上の要件に対応した儀礼屠畜による牛肉です。このためポーランドは、こうした固有の要件を持つ市場への有力な供給国となっています[4, 9]。

アジアで多様化する消費者ニーズ

経済発展や都市化、所得水準の向上に伴い、アジアでは食肉、とりわけ牛肉の消費が伸びています。輸入事業者が求める商品は多様であり、EUは安全で高品質な牛肉を供給する取引先としての評価を高めています。日本では、焼肉やすき焼きに適した霜降り牛肉への需要が拡大する一方、牧草飼育による上質な赤身牛肉や、外食・小売向けの骨なし部分肉にも大きな市場があります[6, 11, 13]。香港の高級レストラン、とりわけミシュラン星付きレストランでは、伝統的な広東料理の技法と最高級の牛肉が組み合わされ、牛肉料理が洗練された一皿へと高められています。柱侯醤で煮込んだ牛スペアリブや、上質な牛肉を使った乾炒牛河(牛肉入り炒め麺)は、その代表例です[10]。

生産方法や得意分野の異なる供給国がEU域内にそろっていることは、アジアの取引先にとって大きな利点です。自然放牧によるジューシーな牛肉ならアイルランド産、ステーキに向いた肉用種の部位ならフランス産が候補となります。品質と価格のバランスに優れ、規格のそろった骨なし牛肉を加工原料や大規模外食向けに安定調達したい場合には、ポーランド産が有力となります[4, 9, 12]。こうした柔軟で補完的な供給体制が、アジアにおけるEUの競争力を支えています。供給元の多様性とEUの食品安全基準を組み合わせることで、輸入事業者は高級レストランから食品製造まで、各市場層のニーズに合わせて商品を選ぶことができます。

出典

1 2025年通年の最終報告は国別に取りまとめ・検証中であるため、上記の数値にはEU統計局Eurostatの「Key Figures on the European Food Chain」に収録された公式生産統計(枝肉重量)が用いられています。[1, 2, 3, 4, 5]

[1] (https://www.thedairysite.com/news/spain-and-poland-top-eu-meat-production-in-2024-report)

[2] (https://ahdb.org.uk/news/imports-rise-13-as-production-drops-eu-beef-market-update),

[3] (https://www.statista.com/statistics/545399/beef-and-veal-production-volume-european-union-28/?srsltid=AfmBOoo6tiq7bu4BS_CHafoL93yFEiKOZTU2CH_NShBxw8sMJsmNguXb)

[4] (https://www.stat.si/statweb/en/News/Index/14401)

[5] (https://www.thebeefsite.com/news/spain-and-poland-top-eu-meat-production-in-2024-report)

2 EU統計局(Eurostat), “Agricultural production – livestock and meat statistics”, European Commission. https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=Agricultural_production_-_livestock_and_meat#Veal_and_beef

3 欧州委員会農業・農村開発総局, “Short-term outlook for EU agricultural markets” / EU Meat Market Observatory.

4 ポーランド国立農業支援センター(KOWR), “Handel zagraniczny artykułami rolno-spożywczymi” / “Bilanse rynkowe – rynek mięsa wołowego”.

5 ポーランド中央統計局(GUS), “Rocznik Statystyczny Rolnictwa” / “Produkcja żywca rzeźnego i mięsa w Polsce”.

6 アイルランド食品委員会(Bord Bia), “Irish Beef Sector Performance and Export Performance Report”.

7 フランス全国畜産・食肉業際連合(INTERBEV), “French Beef Industry Statistics and Export Trends”.

8 ドイツ連邦農業・食料庁(BLE), “Der Markt für Vieh und Fleisch in Deutschland”.

9 ポーランド肉用牛飼養者・生産者協会(PZPBM), 市場報告書 “Eksport polskiej wołowiny na rynki trzecie”.

10 https://www.tasteatlas.com/hong-kong/meat-dishes/restaurants.

11 米国農務省海外農業局(USDA FAS), “Livestock and Poultry: World Markets and Trade” / “Asia Beef Import Demands”.

12 欧州委員会, Access2MarketsデータベースおよびEU農産物・食品貿易統計(EU域外国向け輸出).

13 農林水産省(MAFF), 食肉輸入統計・市場需要分析.

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