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ポーランドにおける獣医療の原則

家畜への抗菌剤その他の医薬品は、原則として獣医師が施す獣医療の一環としてその本人にのみ投与が認められています。ただし、例外的に一部の医薬品は、獣医師の監督下で助手が投与することもできます。

家畜用抗菌剤は、獣医師のみが処方することができる医薬品です。これらは、獣医師が獣医診療所を通して獣医療を提供する目的に限り、獣医薬品卸売販売業者からのみ入手できます。

獣医薬品の投与に先立っては、まず獣医療診断、家畜の臨床検査、場合によっては追加検査が必要となります。

獣医療には、当局により流通が認められた獣医薬品のみ使用することができます。

ポーランドにおける獣医療の監督
獣医薬品の流通(登録)は、事業者の申請を受け、医薬品・医療機器・殺生物性製品登録局長の決定をもとに認可されます。
流通が認められた獣医薬品は、医薬品・医療機器・殺生物性製品登録局により登録されます。
獣医薬品の製造と輸入は、薬事監視長官により監督され、何らかの違反が確認された場合は、獣医長官に通知されます。

薬事監視長官は、獣医薬品を製造または輸入するための認可を付与、更新、取り消し、または変更することができます。

獣医薬品の流通、投与量、品質は、獣医長官と県当局の獣医長によって監督されます。

獣医監督庁は、各獣医診療所が獣医薬品を適切に投与し、獣医記録を正しく行っているかを確認し、獣医薬品の流通と投与の記録などを審査します。

獣医療の一環として獣医薬品を投与する獣医師は、獣医診療所において自身が投与した獣医薬品の記録を5年間保管する義務を負います。
獣医監督庁は、獣医薬品卸売販売業者が運営する施設を技術面と衛生面から評価し、獣医薬品の保管、輸送、受入、払出方法、5年間の保管が求められる記録の管理方法などを確認します(獣医薬品の流通量を示す四半期報告書などの提出状況、仕入、販売、保管の対象となった獣医薬品ごとの売買の記録状況など)。

畜産農家における家畜の獣医療記録は、郡当局の獣医師が確認をすることとされています。

伝達性海綿状脳症(TSE)検査

伝達性海綿状脳症(TSE)検査

TSE検査プログラムは、予防措置(感染が認められない特定年齢の動物の定期的スクリーニング検査)と事後対策(感染の疑いがある動物の検査)をから構成されています。

反すう動物を対象としたこのTSE検査プログラムの一環として、毎年ポーランドでは、牛海綿状脳症(BSE)の早期発見と対応に向けたBSE撲滅プログラムが実施されています。その実施方法は、一部の伝染性海綿状脳症(TSE)の予防、検査、治療に関する2001年5月22日付欧州議会・理事会規則999/2001の第6条、附属書III第A部などの条項、および動物伝染病の症例、治療法、検査範囲の定義に関する2004年12月17日付農業・農村開発省令により規定されています。

BSE撲滅プログラムの対象となった畜牛は、2017年には162,206頭、2018年には39,715頭、2019年には60,196頭、2020年には52,878頭にのぼりました。2011年7月1日より、EU加盟国のうちポーランドを含めた25か国では、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2011年6月17日付欧州委員会実施決定2011/358/EUに則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲を、食用に屠畜される場合は72か月超、死亡牛またはその他高リスク区分の牛の場合は48か月超とすることが認められました。

2014年1月1日より、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2013年2月4日付欧州委員会実施決定2013/76/EUに則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲を、食用に屠畜される場合は96か月超に引き上げられました。

2016年1月1日より、上記の決定に則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲を、高リスク区分の場合は48か月超のままとしつつ、食用に屠畜される場合は108か月超に引き上げられました。2018年1月1日より、上記の決定に則り、食用に屠畜される畜牛に対するBSE検査は不要となりました。ただし、高リスク区分では、引き続き48か月齢超の畜牛について検体検査が必要です。

牛海綿状脳症(BSE)撲滅プログラムの詳細

牛海綿状脳症(BSE)撲滅プログラムの一環として、2021年にはポーランド国内での感染牛をもれなく発見するための取り組みが進められています。BSE検査は、反すう動物の伝染性海綿状脳症(TSE)対策の要となります。

ポーランドではBSE対策として、次に示す高リスク区分の48か月齢超の畜牛が予防措置の対象とされています:

  1. やむを得ない理由で屠畜される牛
  2. 屠畜場への輸送中または搬入後に負傷した場合も含め、生体検査で異常がみられる牛
  3. 死亡牛
  4. 動物伝染病予防のために殺処分される牛
  5. 動物由来タンパク質を含む飼料を給餌されたことが発覚した牛群の牛

さらに、事後対策として、年齢を問わずBSE感染が疑われる畜牛に対して検査が実施されます。

BSEの予防、抑制、撲滅に向けた取り組みは、一部の加盟国に年次BSE検査の実施内容変更を認める2009年9月28日付欧州委員会決定2009/719/EC(2009年9月29日付EU官報L256、第35ページとその改正内容)を念頭に置きつつ、特定の伝染性海綿状脳症の予防、抑制、撲滅の方針を定める2001年5月22日付欧州委員会・理事会規則(EC)999/2001(2001年5月31日付EC官報L147、第1ページとその改正内容:EU官報ポーランド特別版第3章、第32巻、第289ページ)の要件(以下、「規則999/2001」)に則ります。

BSE撲滅のためには、BSE感染が確認された牛と同居していた牛、発症またはBSE感染確認までの2年間に出生したそれらの牛の子孫、感染牛と出生時期を同じくするコホート牛を、その農場内で特定することが重要です。規則999/2001において、コホート牛は、感染牛の出生12か月前後に同一の牛群内で生まれたか、自身の生後1年までに一度でも感染牛と同居し、感染牛と同じ飼料を摂取した可能性がある牛と定義されています。

さらに規則999/2001は、予防措置と事後対策から構成される年次TSE検査プログラムを、同規則の附属書IIIに則って実施する義務を、各EU加盟国に課しています。

2013年2月4日には、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める欧州委員会実施決定2013/76/EU(2013年2月6日付EU官報L35、第6ページ)が発効しました。この欧州委員会実施決定2013/76/EUにより、該当する加盟国は、これまでの年次検査の実施内容に変更を加えることが認められました。

ポーランドにおけるBSE発生状況

EUでは域内の法規に則り、2001年11月から、定期的にBSE検査が実施されています。検査が開始されてから2か月間(2011年11月から12月)に、畜牛30,309頭が検査対象となりました。これに続く各年の検査対象頭数は次の通りです:2002年には286,592頭、2003年には455,413頭、2004年には481,116頭、2005年には515,976頭、2006年には594,121頭、2007年には603,810頭、2008年には611,566頭、2009年には638,072頭、2010年には637,240頭、2011年には475,906頭、2012年には326,280頭、2013年には318,849頭、2014年には207,503頭、2015年には222,821頭、2016年には169,187頭、2017年には162,206頭、2018年には39,715頭、そして2019年には60,196頭

2001年から2019年にかけて、検査対象となった6,836,878頭のうち76頭でBSE感染が確認されました。2019年には、1頭で非定型BSEが確認されましたが、母集団に対してごく稀な孤発性のものとみなされるため、防疫上ポーランドの地域区分に影響はありません。幸い、ポーランドではBSE発生が抑えられ、BSE検査体制もしっかり機能していることから、2018年から屠畜される健常牛はBSE検査の対象とされないことになりました。ただし、高リスク区分の牛と年齢にかかわらずBSE発症が疑わしい挙動を示す牛は引き続きBSE検査を要します。

2011年の検査対象頭数の減少は、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2011年6月17日付欧州委員会実施決定2011/358/EU((2011年6月21日付EU官報L161、第29ページ))に則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲が72か月超に引き上げられたことを反映しています。

2014年の検査対象頭数の減少は、欧州委員会実施決定2013/76/EUに則り、ポーランドを含む一部の加盟国において年次BSE検査の実施内容変更が認められ、検査対象とされる畜牛の月齢範囲が96か月超に引き上げられたことを反映しています。

2016年の検査対象頭数の減少は、欧州委員会実施決定2013/76/EUに則り、ポーランドを含む一部の加盟国において年次BSE検査の実施内容変更が認められ、検査対象とされる畜牛の月齢範囲が108か月超に引き上げられたことを反映しています。

2001年から2019年までの検査対象とされた畜牛の頭数を表1にまとめました。

1

期間 健常とみなされ屠畜された牛

 

やむを得ない理由で屠畜された牛 病気牛または病気の疑いにより屠畜された牛 死亡牛

 

BSE感染が疑われBSE撲滅のために殺処分された牛 合計
2001年 29,882 347 0 80 0 30,309
11月 – 12月
2002年 278,709 4,709 1,183 1,944 47 286,592
1月 – 12月
2003年 428,452 9,401 2,757 14,715 88 455,413
1月 – 12月
2004年 445,198 9,259 2,134 24,449 76 481,116
1月 – 12月
2005年 472,028 10,495 648 32,552 253 515,976
1月 – 12月
2006年 540,148 10,035 382 43,328 228 594,121
1月 – 12月
2007年 546,243 9,529 61 47,883 94 603,810
1月 – 12月
2008年 556,583 8,758 7 46,196 22 611,566
1月 – 12月
2009年 587,339 6,811 9 43,900 13 638,072
1月 – 12月
2010年 590,171 310 1 46,752 6 637,240
1月 – 12月
2011年* 440,856 190 887 33,964 9 475,906

 

1月 – 12月
2012年 299,682 384 1,501 24,691 22 326,280
1月 – 12月
2013年 280,145 899 588 37,179 38 318,849
1月 – 12月
2014年** 172,139 1,469 463 33,407 25 207,503
1月 – 12月
2015年 184,427 4,076 440 33,866 12 222,821
1月 – 12月
2016年*** 131,825 4,388 456 32,498 20 169,187
2017年 124492

 

3,624

 

670

 

33,407

 

13 162,206
2018年 0 4,261

 

544 34,900

 

10 39,715
2019年 2 10,692

 

714

 

48,753

 

35

 

60,196

* 2011年7月1日より、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2011年6月17日付欧州委員会実施決定2011/358/EUに則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲が変更されました。

** 2014年1月1日より、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2013年2月4日付欧州委員会実施決定2013/76/EUに則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲が変更されました。

** 2016年1月1日より、決定2009/719/ECを改正し一部加盟国の年次BSE検査の実施内容変更を認める2013年2月4日付欧州委員会実施決定2013/76/EUに則り、BSE検査対象とされる畜牛の月齢範囲が変更されました。

 

ポーランドでは2002年に初めてBSE感染が確認されました。この年には合わせて4件のBSE感染が確認され、続く2003年には5件、2004年には11件、2005年にはポーランドで最多となった20件の感染が確認されました。これをピークに2006年から2011年にかけて感染件数は着実に減少しました。具体的に感染が確認された件数は、2006年には10件、2007年には9件、2008年には5件、2009年には4件、2010年には2件、2011年には1件、2012年には3件、2013年には1件となり、その後、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年のいずれにおいてもBSE感染は確認されませんでした。2019年には、非定型BSE感染が1件確認されました。

ポーランドにおける各年のBSE発生件数を表2に県別にまとめました。

2

ドルヌィ・シロンスク県 クヤヴィ=ポモージェ県 ルブリン県 ルブシュ県 ウッチ県 マウォポルスカ県 マゾフシェ県 オポーレ県 ポトカルパチェ県 ポドラシェ県 ポモージェ県 シロンスク県 シフィェンティクシシュ県 ヴァルミア=マズールィ県 ヴィエルコポルスカ県 西ポモージェ県
02 04 06 08 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32
2002 2 1 1
2003 1 1 2 1
2004 1 1 2 1 1 1 1 2 1
2005 3 2 1 4 1 4 5
2006 1 1 1 1 2 1 1 2
2007 1 1 3 1 1 2
2008 2 1 2
2009 1 1 2
2010 1 1
2011 1
2012 1 2
2013 1
2014
2015
2016
2017
2018
2019 1*
2002-2019 4 3 7 1 7 5 14 2 3 10 0 0 2 5 12 1
合計 76*

 

* 2019年には、非定型BSE感染が1件確認されましたが、防疫上ポーランドの地域区分に影響はありません。

 

予防措置によりBSE感染が最も多く確認されたのは、健常とみなされ屠畜された牛でした。事後対策では3件のBSE感染が確認されました。

BSE感染が確認された畜牛の頭数を、区分別に表3にまとめました。

3

BSE感染件数 健常とみなされ屠畜された牛 やむを得ない理由で屠畜された牛 BSE発症牛

 

死亡牛 コホート牛
2002 4 3 0 1 0 0
2003 5 4 0 1 0 0
2004 11 8 2 0 1 0
2005 20 16 0 1 2 1
2006 10 7 0 0 3 0
2007 9 6 1 0 2 0
2008 5 3 2 0 0 0
2009 4 3 0 0 1 0
2010 2 2 0 0 0 0
2011 1 1 0 0 0 0
2012 3 3 0 0 0 0
2013 1 1 0 0 0 0
2014 0 0 0 0 0 0
2015 0 0 0 0 0 0
2016 0 0 0 0 0 0
2017 0 0 0 0 0 0
2018 0 0 0 0 0 0
2019 0 0 0 0 1* 0
合計 76* 57 5 3 10 1

* 2019年には、非定型BSE感染が1件確認されましたが、防疫上ポーランドの地域区分に影響はありません。

 

ポーランドにおいてBSE感染が確認された牛は、いずれも同国内で出生していました。感染ルート究明に向けた防疫調査では、哺乳類由来タンパク質を含む飼料または動物性脂肪を含む代用乳の摂取によりBSEに感染した可能性が高い事例はごく僅かにとどまりました。

BSE感染が確認された牛の年齢を分析したところ、件数が多かったのは1995年から2000年までに出生した牛でした。割合が特に大きかったのは1996年から1996年までに出生した牛です。BSE感染牛頭数を、出生年別に表4と図1に示しました。

 

4

出生年 BSE感染件数
1990 1
1991 0
1992 3
1993 1
1994 5
1995 9
1996 10
1997 8
1998 6
1999 11
2000 9
2001 4
2002 0
2003 5
2004 1
2005 2
2007 1*
合計 76*

* 2019年には、2007年に出生した牛の中から1頭の非定型BSE感染牛が見つかりましたが、防疫上ポーランドの地域区分に影響はありません。

 

1

 

BSE感染が最も多く確認されたのは、5歳から9歳までの牛でした。年齢別のBSE感染牛頭数を表5と図2にまとめました。

5

年齢 BSE感染件数
2 1
3 1
4 3
5 7
6 8
7 9
8 12
9 13
10 4
11 3
12* 7
13 3
14 2
15 1
16 1
17 1
合計 76*

* 2019年には、2007年に出生した牛の中から1頭の非定型BSE感染牛が見つかりましたが、防疫上ポーランドの地域区分に影響はありません。

2

 

畜牛の識別登録システム

EU域内における動物の移動を把握するため、加盟国では動物輸送に先立って所定の衛生証明書と欧州域内畜産貿易管理情報システム(TRACES)第1部での輸送(計画)記録を提出が義務付けられています。

衛生証明書が確認されると、TRACESは自動的に輸送先を管轄する獣医当局に動物輸送について通知します。また、輸送中に24時間以上の停車等の待機がなされる場合、上記の手続きと同様に、動物の確認地点(休憩場所)を管轄する当局にTRACESから通知が届きます。EU加盟国からまたは加盟国へ輸送される動物の追跡が必要な場合、担当当局は自国内での輸送に関する範囲で輸送対象の動物の衛生証明書をTRACES上で確認することができます。

畜牛の識別と登録

ポーランドの家畜識別登録システム(IRZ)は、EUの食品安全基準を満たし、他の加盟国において動物性食品の市場を確保することを主な目的としています。

畜牛は出生した農場において、両耳に個体識別番号を示す耳標が装着されます。管理者は識別耳標装着の事実を7日以内にポーランド農業構造改革近代化推進機構(ARiMR)に申告することが求められます。申告を受け、ARiMR は識別された畜牛の出生年月日、性別、母牛と父牛の識別番号、出生牛群居住場所の識別番号、管理者についての登録情報などが記載された牛パスポートを発行します。

畜牛の管理者には、牛群の居住場所で牛の頭数が変化するごとに、その7日以内に異動内容をARiMRに届け出て、同期間内に牛群記録簿にも記入する義務が課せられています。

ARiMRへの異動届出内容は、家畜識別登録システムの全国データベースに記録され、牛を迅速に追跡し位置を特定することができるようになります。

全国データベースには、次の情報が収録されます:

  • 畜牛の管理者(生産者登録情報)
  • 畜牛と居住場所(牛群居住場所登録情報)
  • 畜牛についての異動内容(各種届出情報)

家畜識別登録システムは次の要素で構成されています:

  • 耳標装着済みの畜牛とそれが属する牛群の居住場所についての登録情報(全国データベース)
  • 標識:耳標とマイクロチップ
  • 牛パスポート
  • 牛管理者が記入する牛群記録簿

家畜識別登録システムの全国データベースは、ARiMRの各行政レベルの管轄当局を介してポーランド行政管理システムと統合されています。

畜産副産物等

畜産副産物等は、動物に由来し、人間の食用とされない、または食されなかったものを指します。畜牛からは次のような副産物が発生します:

  • 畜牛を屠畜、解体、加工した後に残る部位
  • 排泄物(糞尿)
  • 賞味期限切れとなったか包装が破損した牛肉を含む食品
  • ケータリング施設で発生する食品廃棄物

 

上記の畜産副産物等は、衛生・防疫上のリスクに応じて三つに分類されています。

最もリスクが高い特定危険部位(SRM)などは第1区分に指定されています。第2区分には、人間または他の動物に危険をもたらしうる家畜排泄物、胃腸内容物、病畜の部位などが含まれます。

第3区分の副産物は最も安全とされ、ポーランドで発生する畜産副産物等の大半を占めています。代表的な例として、健常な家畜を屠畜した後に残るものの、さまざまな理由で食用とされない内臓肉、血液、骨のほか、賞味期限切れとなったか包装が破損した食品、ケータリング廃棄物が挙げられます。畜産副産物等がどの区分に分類されるかは、欧州議会・理事会(EC)規則1069/2009の第8-10条でより詳しく定められています。屠畜場で発生する畜産副産物等は、専門業者による回収までの間は、上記規格での区分に応じて表示がなされた容器・コンテナ等で別々に保管されます。

畜産副産物等の収集、輸送、保管、利用、加工、そして処分における取り扱いは区分ごとに指定されています。いずれの区分においても、利用目的に応じて登録された手段で加工業者(再利用)、焼却施設、工場(肥料等)、ペットフード工場、バイオガス化施設、堆肥化施設、化粧品工場などへ輸送されます。畜産副産物などの管理方法は、欧州議会・理事会(EC)規則1069/2009の第12‐14条により詳しく指定されています。

ポーランドでは、畜産副産物等およびそれらを加工した派生製品は、獣医監督庁による監督を受けます。

 

畜産副産物などから製造が認められる派生製品とは?

  • 動物由来タンパク質加工品、肉骨粉、血液・油脂製品
  • ペットフード、犬用ガム
  • 有機肥料、土壌改良材
  • 革製品
  • 化粧品、獣医薬品、医薬品
  • 油脂化学製品、その他工業製品

 

牛肉の識別体制

牛肉生産・販売に何らかの段階で関わるあらゆる業者は、畜牛の識別・登録制度、および牛肉ならびに牛肉加工品の表示に関する2000年7月17日付欧州議会・理事会(EC)規則1760/2000に則り、域内で導入された識別・登録制度を遵守することが求められています。

表示制度が義務化されることにより、枝肉、四半部、さらに細かい部分肉の識別情報を、それらがどの牛個体またはどの複数頭の牛から得られたのかを識別する情報、あるいは情報の検証可能性と精度条件が満たされる場合は牛肉が得られた複数頭の牛に対応するグループ識別情報と関連付けて把握することができます。

牛肉表示は次の情報を含むものとされます:

  • 牛肉がどの牛個体またはどの複数頭の牛から得られたのかを関連付けて示す牛個体識別番号またはロット番号。牛個体識別番号の代わりにまとめて屠畜された複数頭の牛に対応するグループ識別番号が表示されることもあります。
  • 牛肉を得るために牛個体またはグループ化された牛の屠畜がなされた屠畜場の認可番号と国名(EU加盟国またはその他)。表示には「屠畜:(国名)(認可番号)」という記載が求められます。
  • 枝肉またはより細かい部分への解体がなされた解体施設の認可番号と国名(EU加盟国またはその他)。表示には、「解体:(国名)(認可番号)」という記載が求められます。
  • 牛の出生日
  • 牛が飼育されたすべての国名(EU加盟国またはその他)
  • 屠畜がなされた国名(EU加盟国またはその他)

ただし、出生地、飼育地、屠畜地などにより、求められる表示内容は異なります:

  • 同一のEU加盟国内である場合:「原産国:(EU加盟国名)」
  • 同一のEU域外国である場合:「原産国:(EU域外国)」

牛ひき肉

牛ひき肉の表示には次のような記載が必要です:

「生産国名(EU加盟国またはその他)」

ただし、原産国が異なる場合は「原産国名(EU加盟国またはその他)」も追記します。

牛こま切れ

牛こま切れの表示には次のような記載が必要です:

  • こま切れを得るための屠畜がなされた国名を「屠畜:(国名)」と記載します。
  • 牛肉を加工しこま切れを生産した施設の国名(EU加盟国またはその他)と認可番号を「生産:(国名)(生産施設の認可番号)」と記載します。
  • こま切れのもととなったグループ化された各牛が出生し飼育された国名すべてを「各牛の出生・飼育国名:(国名を列挙)」と記載します。ただし、グループ化された牛がすべて同一国で出生し、飼育・屠畜された場合は、「原産国:(国名)」と記載します。

牛肉の切り身

牛肉の切り身の表示には次のような記載が必要です:

  • 牛肉を得るためにグループ化された牛の屠畜がなされた国名(EU加盟国またはその他)と屠畜場の認可番号(複数の場合は屠畜場1、2、3等と区別して列挙)を「屠畜:(国名)(屠畜場の認可番号)」と記載します。
  • 枝肉の解体がなされた国名(EU加盟国またはその他)と解体施設の認可番号(複数の場合は解体施設1、2、3等と区別して列挙)を「解体:(国名)(解体施設の認可番号)」と記載します。

残留物検査

消費者の健康と国際貿易のルールを守るため、食品に化学残留物が含まれないか検査で確認が必要です。EU加盟国では統一規則に則り、動物の細胞組織、動物由来食品、水と飼料を対象に化学残留物の検査が実施されます。この一連の規則は、1996年4月29日付理事会指令96/23/ECの附属書Iに記載されており、検査の必要性の根拠は、欧州議会・理事会規則(EU)2017/625でも示されています。理事会指令96/23/ECに対応するものとして、各国では残留物検査プログラムが委員会決定2004/449/ECに則り実施されています。

ポーランドでは、動物由来の食品を対象とする残留物検査は、理事会指令96/23/ECに則る形で2017年6月21日付農業・農村開発省令を法的根拠として実施されています。

残留物検査プログラムの執行責任を担うのは農業・農村開発省と獣医監督庁ですが、その参照試験所としてプワヴァ市の国立獣医研究所が調整役を務めます。プログラムの方針と計画は、国立獣医研究所が策定し、獣医長官が実施を承認し、欧州委員会が評価と認定をします。検査結果は国立獣医研究所がとりまとめ、獣医長官、そしてさらに欧州委員会へと提出されます。

残留物検査は、ポーランドの参照試験所となる国立獣医研究所の薬理毒理学部と動物性食品衛生部、さらに全国10か所(ビアウィストク、グダニスク、カトヴィツェ、キエルツェ、ウッチ、オルシュティン、ポズナン、ワルシャワ、ヴロツワフ)の獣医衛生局の試験室が実施します。ここで、信頼性と質の高い試験結果を得るために、正しい分析手順を守ることが重要です。いずれの試験室もポーランド認定センターの認定を受けており、委員会決定2002/657/ECまたはEU法規制(B3区分:環境汚染)に則り認可された分析手順を守っています。

サンプルは獣医長官の指示のもと、獣医監督庁の獣医が屠畜場、集乳所、畜産場、養蜂場、畜舎などで採取します。サンプル採取手法は、検査対象となる家畜と必要なサンプルの種類などを含め、法規制で詳しく定められています。サンプル採取のために最低限必要となる食品または家畜の数量は、前年の食品生産量と屠畜量をもとに算定されています。

検出対象となる化合物は290以上にのぼり、同化作用があり投与が禁止されているA群(ホルモン、抗甲状腺薬、β作動薬、その他の禁止物質)またはB群の獣医薬品(抗生物質等)および環境汚染物質(金属、農薬、マイコトキシン)に分類されます。

残留物検査結果は、欧州委員会による報告書で、各EU加盟国で実施される残留物検査結果とあわせて比較されることで、その妥当性が認められます。消費者への安全を確保すべく、化学残留物検査は動物由来食品を対象に毎年実施されています。ポーランドは、動物の細胞組織と動物由来食品について、常に欧州委員会の要件を満たすべく残留物検査プログラムを更新しているため、世界の食品市場へのアクセスもしっかりと確保しています。

EUの各加盟国は、EU法と国内法に則り、飼料の公的検査を計画・実施しています。ポーランドにおける飼料に対する公的検査は、獣医長官が計画策定と実施を担当し、指定された範囲において獣医監督当局が監督を担当しています。初めて策定と導入がなされたのは2004年です。策定のつど、前年の検査から得られた情報を念頭に入れたリスク分析がなされます。

飼料の公的検査では、栄養素、飼料添加物、有害・禁止物質について成分評価すべく、サンプル試験が実施されます。これらの検査は、製造、販売、給餌される飼料原料、混合飼料、飼料添加物、プレミックスの安全性と品質の確保を目的としています。このため、人材と設備の整った試験室が指定され、獣医監督当局の監督のもとに分析を行っています。

獣医監督当局は、60種類以上にわたる危険化学物質について検査を行うべく、毎年1万点を超えるサンプルを飼料から採取しています。これは、重金属、農薬、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、抗コクシジウム剤等の定量、および同化作用物質や抗菌性物質の検出を目的としています