ポーランドでは、どのような基本原則で家畜の福祉が守られていますか?
ポーランドの養牛農家は、次の5つの自由を守りつつ、畜牛の福祉に配慮しています:
- 飢え、渇き、栄養不良からの自由‐健康を増進する栄養価の高い適切な飼料と清浄な水をいつでも十分に摂取できる環境
- 不快からの自由‐適切な環境の畜舎で守られた快適な暮らし
- 痛み・傷害・病気からの自由‐健康維持のために適切な飼養環境と体調が悪い場合の適切な獣医ケア
- 本来の行動がとれる自由‐十分広い適切な環境での群れの仲間との暮らし‐群れの仲間とともに暮らせる十分な広さの畜舎
- 恐怖・抑圧からの自由‐安心できる環境で優しく守られた暮らし
これらの5つの自由は、EU域内における家畜の福祉の基本原則とされています。家畜の権利を尊重すべく、EU域内ではクロスコンプライアンス(環境配慮要件)制度のもと、すべての農家にはEU法規制に則る基準を守る義務が課せられています。このように、EUは世界でもとりわけ家畜の福祉に配慮した畜産体制を整えています。
EU市場では、一律の基準に基づく厳格な検査体制により、家畜の5つの権利が守られています。たとえば、欧州会計監査院による検査制度においては、家畜の福祉をめぐる違反行為だけでなく、評価すべき新しい取り組みを特定すべく、域内における検査当局の包括監査が実施されています。
出典:https://www.eca.europa.eu/Lists/ECADocuments/SR18_31/SR_ANIMAL_WELFARE_PL.pdf
2020年以降の実施制度紹介(ポーランド語):
https://www.gov.pl/web/arimr/dzialanie-14-dobrostan-zwierzat—kampania-2021-r
https://www.gov.pl/web/arimr/ogolne-zasady-przyznawania-platnosci2
https://www.gov.pl/web/arimr/stawki-platnosci8
https://www.gov.pl/web/arimr/informacje—wariant-23-dobrostan-krow-mamek2
2014-20年度農村開発プログラムでの家畜福祉向上に向けた取り組み
ポーランドでは、2014-20年度農村開発プログラムにおいて、法規制の遵守にとどまらず、家畜の福祉をさらに向上させる農家の取り組みが助成されています。この助成制度は、繁殖雌牛、乳牛、豚(肉用豚、雌豚)の福祉向上への取り組みを対象として2020年に導入されましたが、2021年には羊農家による同様の取り組みも対象となりました。
家畜福祉向上に対する助成申請は、原則として3月15日から5月15日、すなわち同プログラムにおける直接支払や面積払いの交付金への申請と同時期に受け付けられています。
助成対象活動の期間は1年ですが、それ以降も継続が認められます。
同プログラムでは、畜牛を対象とする第2区分の2.3では、繁殖雌牛、子牛、若雌牛、体重300 kg以下の肥育素牛の福祉向上への取り組みが対象とされています。
- 植物の休眠期‐放牧活用型畜産について基本要件で定められた面積より少なくとも20%広い屋外空間へのアクセス確保
- 植物の生長期‐140日以上の放牧
繁殖雌牛一頭あたりの年間交付額は329ズロチです。2021年に助成を受けた養牛農家は5万戸近くにのぼりました。
欧州共通農業政策に則る2023-27年度ポーランド戦略計画事業
家畜福祉の向上を図る現行のプログラムは、別の資金調達メカニズムのもと、同様の条件と助成金額で継続される見込みです。
ポーランド産食肉の高い品質はどのように確保されていますか?
ポーランドでは、他のEU加盟国と同様に、厳格な生産基準が守られ、家畜の福祉にも細かい配慮がなされています。たとえば、家畜に対する肥育ホルモン剤の投与、そして飼料への成長促進剤や抗生物資の配合は禁止されており、他の手段・目的による抗生物質の投与も制限されています。また、農場から食卓まで、食肉生産の透明性を確保する取り組みにより、確かな品質が守られています。
EU域内のどこであれ、厳格な基準と手続きが守られています。EU加盟国のあらゆる農家には、食品生産に際し、クロスコンプライアンス(環境配慮要件)制度のもと、各種法令により細かく定められた要件が課せられています。この一環で、EU域内の畜産農家には、次の措置をとる義務があります:
- 家畜を怪我や苦痛から保護
- 資格と能力を備えた担当者を十分な人数動員して獣医療を確保
- 家畜のニーズに合わせた照明と採光を確保
- 病気になった家畜の看護と必要に応じた専門獣医への支援要請
- 家畜の飼養と移動についての正確な記録
- 風雨や悪天候からの保護
- 家畜への虐待防止
ポーランドにおける畜牛の飼養頭数はいくらですか?2021年に生産状況はどう推移しましたか?
2021年12月時点での飼養頭数は、前年比で1.5%増え、637万1500頭でした。最も大きな伸びを示したのは、1‐2歳の区分です。構成別でみると、2020年12月に比べ、成雌牛の割合が2.2%と著しく減少し、飼養頭数では10万2000頭減少して(4.3%減)228万9000頭になりました。一方、1歳未満の子牛の飼養頭数は3.8%増の180万1000頭になりました。1‐2歳の若牛の飼養頭数は前年比で6.1%増えて、190万9400頭に達しました。
2021年上半期の生産高は、前年比より生体重量で前年比9.9%増の59万トンにのぼりました。2020年上半期の畜牛の取引量は37万5000トンと、2019年上半期よりも1.3%増加しています。牛肉加工のための畜牛出荷の流れでは、仲介取引は72%台、直接出荷は24%台、一貫生産は4%台をそれぞれ維持しました。2021年下半期の畜牛飼育実績は、生体重量で約56万5000トン(前年比約2.0%減)、2021年全体では115万5000トン(前年比約6.0%増)となりました。
ポーランドの農産品輸出規模はどのくらいで、そのうち牛肉の割合はどの程度ですか?
2021年の牛肉、牛肉加工品、生体牛の輸出高は前年比9%増の70億ユーロでした。これは同国の農産品輸出高の19%を占めています。このうち、牛肉の輸出高は23%(16億ユーロ)を占めています。
ポーランドの牛肉生産量シェアは世界の約0.8%ですが、その生産量の大部分が輸出されているため、輸出高でみると世界でのシェアは約4.0%です。
次期欧州共通農業政策を通し、EUは何を目指していますか?
欧州共通農業政策では、持続可能な発展が新たな目標として掲げられており、新制度の下では、食品の安全性と環境を守りながら生産の最適化が追求されます。具体的には次のような取り組みを通して持続可能な農業が実践されます:
- 輪作と有機肥料の施用による土壌保全と化学物質による水質汚染の防止
- 自然環境と消費者の健康に害を及ぼさない植物の保護:
- 精密農業と複合農業
- 病気や害虫に強い品種の栽培
- 時期に合わせた農作業
- 植物の生物学的保護
- 自然環境に配慮した糞尿の活用
- 農産物の有機生産と加工
ポーランドにおける肉牛飼育では、持続可能な農業と循環経済モデルを実践することが可能です。肉牛飼育にあたっては、自家製の粗飼料と濃厚飼料が基礎とされており、飼料添加物はあくまでも補助的に与えられています。
農家は養牛から得られる堆肥を用いて自家製飼料を生産しており、無機質肥料はあくまでに補助的に施用されています。家畜ふん堆肥の貯蔵と施用のための器具は、地下水を汚染から守り、メタン排出を抑えるように工夫されています。飼料作物は商品作物に比べると、圧倒的に少ない農薬使用量で栽培できます。養牛は集約化せず粗放的に営まれているため、微生物対策も不要です。
ポーランドの牛肉業界は、EUが掲げる持続可能な発展にどのように対応していますか?
欧州共通農業政策では、持続可能な発展が新たな目標として掲げられており、新制度の下では、食品の安全性と環境を守りながら生産の最適化が追求されます。具体的には次のような取り組みを通して持続可能な農業が実践されます:
- 輪作と有機肥料の施用による土壌保全と化学物質による水質汚染の防止
- 自然環境と消費者の健康に害を及ぼさない植物の保護:
- 精密農業と複合農業
- 病気や害虫に強い品種の栽培
- 時期に合わせた農作業
- 植物の生物学的保護
- 自然環境に配慮した糞尿の活用
- 農産物の有機生産と加工
ポーランドにおける肉牛飼育では、持続可能な農業と循環経済モデルを実践することが可能です。肉牛飼育にあたっては、自家製の粗飼料と濃厚飼料が基礎とされており、飼料添加物はあくまでも補助的に与えられています。農家は養牛から得られる堆肥を用いて自家製飼料を生産しており、無機質肥料はあくまでに補助的に施用されています。家畜ふん堆肥の貯蔵と施用のための器具は、地下水を汚染から守り、メタン排出を抑えるように工夫されています。飼料作物は商品作物に比べると、圧倒的に少ない農薬使用量で栽培できます。養牛は集約化せず粗放的に営まれているため、微生物対策も不要です。
ポーランドはメタンなどの温室効果ガス排出削減に向けてどのように取り組んでいますか?何か特別な飼料を利用しているのですか?
欧州共通農業政策では、環境保護が新たな目標として掲げられており、この一環としてポーランドの農業部門は温室効果ガス排出を約30%することが求められています。養牛からの炭素排出量(カーボンフットプリント)は比較的大きいため、ポーランドの農家は次の措置などを通して排出削減を目指しています:
- 給餌の効率化:
- カロリー密度の増大化
- コーンサイレージから牧草サイレージへの転換
- 永年草地の改良と放牧の長期化
- 飼料添加物の活用:サポニン、タニン、イオノフォア等
- 作業改善:
- 家畜ふん堆肥の貯蔵と施用
- 寝床のpHを下げる調整剤の利用
- 畜舎の空気清浄:オゾン処理、イオン処理
- 家畜の糞尿からのバイオガス生産
- 畜牛改良をはじめとする飼養方法改善:
- 飼料利用(転換)効率の向上
- メタン排出削減に向けた畜牛改良
家畜の福祉や気候変動対策に対する認証制度はありますか?
ポーランド農業構造改革近代化推進機構は、2020年より、家畜福祉事業として、家畜の飼養方法の改善に向けた農家の取り組みを助成しています。この助成制度は、2021年と2022年にも実施されています。
対象となるのは、法令で義務付けられる水準よりも優れた方法で家畜を飼養する農家で、その取り組みに伴う機会費用が助成金で補填されます。通常の飼養方法を採用した場合の所得との差額が補填されるため、経済的には最適ではない飼養方法を採用して家畜の福祉向上を図ることを農家に促しています。
畜牛の福祉:
第2.1区分 乳牛の福祉‐放牧
第2.2区分 群飼いの乳牛の福祉‐畜舎面積の拡大
第2.3区分 繁殖雌牛の福祉‐放し飼い、屋外環境の確保
ポーランドでは省エネ認証制度が導入されていますか?
ポーランドでは、2016年5月20日付けの法令(2016年官報第831号)により省エネ認証制度が導入され、設備近代化による省エネ対策が助成されています。
将来に計画されている省エネ事業またはそれに類する対策による最終的な省エネ効果に対して認証が与えられます。
認証に必要な省エネ効果は、年平均で原油換算10トン以上(116.3 MWh/年または418.68 GJ/年)です。年間消費電力が100 GWhを超える企業は、省エネ法第15条に則り、すでに開始された対策に対しても、省エネ認証に相当する類似の支援を受けることができます。
なぜポーランドの国民一人あたりの牛肉消費量は2016年から伸び続けているのですか?他のEU加盟国では、菜食主義の広がりなどにより、横ばいまたは減少傾向も認められます。
2016年から続いている牛肉消費量の増加は、主に値下がりによるものです。ポーランドでは、牛肉消費量は主に価格と平均所得に左右されています。菜食主義の広がりは、今後の消費量に影響を与えうるとは考えられます。ただし、ポーランドの牛肉消費量はもともとEU加盟国の中でも低い方で、国民一人あたり年間3.0 kg程度にすぎません。
ポーランド政府はアジア市場への牛肉輸出を促進すべく、何か戦略を打ち立てていますか?
ポーランド農村開発省は、食品輸出促進戦略を打ち立て、世界市場におけるポーランド産食品の認知度とブランドイメージの向上、競争力の強化に努めています。本戦略において、日本は有力な輸出相手国として位置付けられています。
同省は、2022年に東京で開催される見本市・展示会、FOODEX JAPANとISM Japanにも参加する予定です。
日本向けポーランド産牛肉輸出業者の一覧リストはどこに掲載されていますか?
輸出業者の一覧リストは、こちらに掲載されています:
ポーランド牛肉業界報告書もこちらから
ダウンロードの上、あわせてご参考になさってください。